濹堤通信社綺談

江都の外れ、隅田川のほとりから。平易かつ簡明、写真入りにて時たま駄文を発行いたします。

有馬記念の日、The Peaceを吸う

今年あったこと、というのを考えてみれば、そりゃあまあ色々あるわけですが、やっぱり煙草を吸わなくなったのが一番大きな変化に思える。
僕が煙草をやめた経緯については以下の通り。

mikoyann.hatenablog.com


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3月の頭に自棄を起こして禁煙を決意し、そこから何だかんだ吸わずに年の瀬を迎えてしまった。いやまあ、正直3日で終わると思っていたんですよ。


煙草を吸わなくなって以降、毎日仕事に出かける道で、なぜか「ああ、煙草やめたんだなぁ」と思うポイントがある。
4つめの角を曲がったところにある電柱なのだが、なぜかそいつを見上げて、建物に縁取られた東京の狭い空を見ると煙草をやめた実感がわいてくるのだ。

禁煙したての頃こそ、煙草を吸えない、吸っても美味くないことに随分がっかりした。でも最近では、もうすっかり煙草を吸わない人の顔をしていると思う。

実はいま仕事が一番の繁忙期というやつの真っ最中なのだが、そうなると昼食を食べる場所が松屋くらいしかなくなってしまう。
松屋は牛丼チェーンの中では一番好きではあるけれど、たまにはと思って隣にあるチェーンの居酒屋ランチを試してみた。
忘れていたが、居酒屋というのは席で煙草が吸えるところもあるわけで、暖簾をくぐったところで店員に「お煙草はお吸いに?」と聞かれて少し面食らってしまった。
「いやあ、3月まで1日1箱だったんですけどね、なんかすっかりやめちまいまして、へ、へ……」
などと言っても仕方がないので顔の前で手を振り、僕は無事に禁煙席に通される運びとなった。
ここで食べたランチの味噌汁が、キャベツの切れ端が2切れしか入っていない中々のやつだった話は、また別のお話である。

競馬好きにとって、年末とは有馬記念と同義だ。
ウンウン唸って考えた馬券が見事に外れ、「いやまだ、ホープフルステークスが。東京大賞典が……!」と言ってるうちに、あっという間に年が暮れる。

ここ数年、有馬記念の日は我が家にお客さんを招いて僕の手料理をお見舞いしている。
今年のテーマは「居酒屋」で、必殺のぶり大根、チャーシューの台湾ふう、自家製あん肝ポン酢、自家製数の子チーズなどなどでおもてなしを行った。


僕はもう飲んでもすっかり煙草を吸いたくならないのだが、隣にいる、今年の夏にコロナをやって以降禁煙したというやつが実に煙草を吸いたそうにしている。
と、思えばなんと喫煙者からアメリカンスピリットを貰って吸い始めたではないか。
なんだ貴様、貴様の禁煙とはそんなものなのか。
聞けば、僕と同時期に禁煙した知人も、その前日に煙草を吸っていたというではないか。
なんか悔しいぞ。
吸うか。吸おう。

とっておきのThe Peaceに火をつけ、吸い込む。
何の変哲もない。美味くもない。
酒の助力もあって、2本、3本と吸っただろうか。丸で美味くもない。1箱1000円もする、国産最高級煙草の美味さを感じることがないことに、どうしようもなく空しさを覚えたところでやめた。

そこから、1週間経った。
吸わないことは何の苦でもなく、吸いたくなるということも丸でない。

どうやら、本当に煙草をやめてしまった2023年だった。