濹堤通信社綺談

江都の外れ、隅田川のほとりから。平易かつ簡明、写真入りにて時たま駄文を発行いたします。

金曜の夜、グリーン車で帰る


ここにはいたくないのだが、どこにも行きたくはない。
もうずっと、この思いに取り憑かれている。自分を変える度胸の無さ故だろう。

ある日突然日常が変わる、なんてことが起こらないことはとっくに知っている。
00年代ライトノベルの主人公のようなことを思ったところで、どうなるわけでもない。
つまらない上に意味のない思いだと自分でも思っているが、こればっかりはどうしようもない。

まあそんな、秋の憂鬱のただ中に浮かんでいるのです。
この閉塞感を慰めるために、最近覚えてしまった遊びがある。

グリーン車で帰るのだ。
職場から自宅まで、中距離電車で3駅。正直20分足らず。
平日だとグリーン料金は780円もする。とんだ大名旅行だ。

駅のNEWDAYSで買ったアルコールとつまみ。
あるときはハイボールとチー鱈。
あるときは缶チューハイにいかり豆。
ビールと一緒にポテチも良い。
お供は決まって東京スポーツ

E231系だかE233系だかの、2階席の湾曲した窓ガラスに都心の灯りが溶けていく。

どこかへいく勇気がないので、こんなことをしている。
虚しく、馬鹿らしいのかもしれない。
それでも、窓の框に置いたウィスキーは、ここではないどこかへ向かう旅の気配が溶け込んだ味がするのだ。

追記


水曜日だけれども、グリーン車で帰った。
なんせ千葉まで行ったのだ。松戸や市川ではなく、千葉。千葉市、チバ・シティだ。
そうなると、東京駅まで40分かかる。もう、グリーン車飲酒のチャンスとしては絶好なわけだ。

改札内駅ナカNEWDAYSに全てを任せるのもそれはそれで"旅っぽい”のだけれど、あえて改札外のコンビニに寄る。
改札内でも探せばあるだろうが、ぬか漬けを買う。
ここは確実性重視だ。野菜系のつまみが欲しかったのだ。

旅っぽいといえば駅弁だが、夜になると駅弁は割引で売られているのでそれを狙う。
幸い、千葉駅には万葉軒という地場の駅弁業者がある。
ここの名物駅弁、トンかつ弁当700円を3割引でゲット。なんともこれは嬉しいじゃないか。

そして最後の仕上げで隣のNEWDAYSへ。
40分も乗るのだから、ビールはロング缶だ。東京スポーツも忘れずに。
発車間際の総武線快速5号車に乗り込み、2階席の一角に陣取れば上の写真のごとく。


万葉軒のトンかつ弁当は、こんなに「カツです!めしです!!!以上です!!!!!」みたいな見た目なのに、なんとも優しく懐かしい食べ物なのだ。
添えられたごま昆布、筍の煮物、十分な量のしば漬け。どれもいい。

なんというか、悪い遊びの手際が良くなってしまったような気もする。
それでも、江戸川の鉄橋を渡るころには、すっかりいい気分になっていたので何の心配もいらない。