濹堤通信社綺談

江都の外れ、隅田川のほとりから。平易かつ簡明、写真入りにて時たま駄文を発行いたします。

ぼくが飯を作る理由

 飯に飽きた。

 別に、食べるのに飽きたというのではない。自慢ではないが、僕は食いしん坊な方だと思う。食べる、という行為に対してはかなり貪欲だし、できることならば美味しいものが食べたい。今だって食べたい。だいたい、いつだって食べたい。
 当然、体調が悪くて食欲がないというのでもない。メンタルも同様。実は去年の冬にうつ状態になったりもしたのだが、その時はてきめんに飯が食べられなくなった。ひもじい、寒い、もう死にたい。不幸はこの順番でやってくる。これは僕の場合には全くそうだったので、飯を食べたくない時は気をつけるようにしている。
 では何なんだというと、自分の作る飯にすっかり飽きちゃったのである。

 「家にいやがれ」と政府や役所が言っているのでという訳でもないが、ここのところはほぼ家で飯を食べる。外に出たってお店が開いていないのだから、当然そういうことになる。緊急事態宣言が出てからほぼ1ヶ月、毎日毎日だ。
 これは前にも言ったのだが、僕は今、男3人で暮らしている。去年の夏からそういうことになったわけだが、驚くべきことに僕は他の2人が作った飯というものを食べたことがない。するとまあ成人男性3人前の飯を、僕だけが作っているわけだ。毎日。ここ1ヶ月は下手したら1日3食。いやはや、もう立派なおさんどんだ。
 ただまあこれ、別に愚痴というわけでもないし、非難するつもりもない。実は僕が3人分の飯を作っているのは、僕が勝手にやっていることにすぎないのだ。他の誰に頼まれた、というのではない。そういう役割が、この「シェアハウス」で決まっているのでもない。事実上そういうことになってしまっている気はするが。重ねていうが、愚痴ではない。

 ところで、僕は食べ物について好き嫌いというものがない。全くと言っていいほど、無い。
 偏食ではない、というどころではない。当然ながら、嫌いな食べ物というのは無い。なんでも食べるし、世間一般ではゲテモノと言われるようなものでも食べる。先述の通り食いしん坊なので、食に対する好奇心は旺盛だ。
 問題なのは、「好きな食べ物」というのも無いのだ。世の中には「これだけ食べていればいい」というくらい好きな食べ物がある人がいる。例えば同居人の1人はカレーがめちゃくちゃに好きで、多分毎日カレーでも文句を言わないのではないかと思う。
 僕の場合はそれがない。すると何が困るって、同じものを食べ続ける、ということがとにかく苦痛になってくるのだ。

 フォロワーに、外食以外では毎日同じものを食べ続けていた人がいる。「楽でいい」というのはそうだろう。
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 でも、僕にはできない。断言するが絶対に無理だ。というか、無理だった。めちゃめちゃに忙しく、昼食を考えるのが面倒くさくなり、コンビニでミックスサンドとチョコオールドファッションドーナツを食べ続けていた時期があった。結果、病んだ。まだ実家に住んでいた頃で、朝晩は違うものを食べていてもダメになった。
 毎日の献立を考えるのが、面倒くさくなるときというのはある。自分が何を食べたいのかよくわからないこともある。それでも、過去数日の献立、冷蔵庫の中身、スーパーマーケットの値札、そういったものとにらめっこをした挙げ句、献立が組み上がっていくのは楽しい。ある種の快感だ。しかしながら、それすらも億劫なときでも、同じものを食べるくらいなら僕は献立を考える。こういうところが、僕が食いしん坊たる所以なのだろうと思う。

 そんなわけで毎日毎日献立を考えて、あれやこれやと飯を作っている。その一部は当ブログでもご紹介しているので、わかっていただけると思う。
 すると外食の機会がそうそう無いこのご時世、どういうことが起きるか。最初に言ったとおり、自分の飯に飽きちゃったのだ。

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 ということで、今日の昼は外食をしてきた。
 「家にいやがれ」ということなので、遠出はできない。幸いなことに、我が家から一番近い飲食店は純然たる「町の中華屋さん」だ。
 日替わりのAセット、税込みで800円。今日はレバーの唐揚げ。これは嬉しい。レバーの唐揚げは僕の好物だし、これは家では作らない。揚げ物は面倒だし、レバーの下処理も面倒だからやらない。そのうちやるかもしれないけど。
 「町の中華屋さん」ならではの、油とうま味調味料たっぷり目のの味付けがたまらない。脳にドバドバと「汁」が出てくるのを感じる。この味は自分では絶対に作れない。いや、作らない。
 隣のおじさんがビールを頼む。そうだよな、世間は連休の最終日だもんな。俺はまだ仕事がないから家にいるけど……
 徒歩3分、高々800円で随分と刺激的な体験をすることができた。ということで、僕はまた飯を作る。今日はパエリアだよ。

 以下、料理。
 だんだんと飯に飽きているため、暇に任せて凝ったものを作ったりしている。

おうちカレー

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 カレーは、足し算。何を入れたっていいし、入れれば入れただけいい。どうせ最後は「カレー味」になるんだから。
 ということで、市販のルーにスパイスをぶち込んだ。トマト缶も加えたし、ウスターソースも入れた。よくわかんないけどインスタントコーヒーも入れてみた。
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 僕は東京の人間で、両親も関東出身だ。家系を見てもずっと関東。でも、カレーは牛肉だ。豚肉のカレーというのを家で食べたことがない。どうせカレー味になるのだから、アメリカ産だかオーストラリア産だかの一番安い切り落としを入れている。精肉売り場で和牛の牛脂を貰ってきて、それで炒めれば十分だ。玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、それにズッキーニとしめじ。何でも入れてしまえばいいのだ。
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 結果、ハチャメチャに美味いカレーができる。もう一度言う。カレーは、足し算だ。

しょうが焼きと、ホタルイカのぬた ズッキーニ浅漬け

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 しょうが焼きの玉ねぎはケチらないほうがいい。というか、玉ねぎの方が主体だ。豚肉は玉ねぎに旨味を吸わせるためにある、といっても過言ではない。それくらいしょうが焼きにおける玉ねぎは大きな存在だ。同じ皿に乗ってるのはコールスロー
 今年のホタルイカは美味しいらしい。実際、美味しかった。酢味噌和えにしてしまったのが、少しもったいなかったかもしれない。
 ズッキーニの浅漬けは『きのう何食べた?』で知って以来よく作っている。キュウリよりも優しい歯ざわりで、中々に美味しい。バリバリ飯を作っているせいで、段々自分が筧史朗めいてきているような気がする今日このごろ。僕の見た目は若先生ですが……

スモークサーモンのサンドイッチ

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 土曜日は、こういう朝ごはんで始めたい。仕事のない土曜日の朝に、コーヒーを入れるためにお湯を沸かしている時間というのが、僕は一番好きな時間かもしれない。というか、お湯を沸かすというのは良い。お湯を沸かしたあとで、嫌なことが待ち受けているというのはあまりないだろう。
 頼まれもしないのに、3人分のサンドイッチを作っている。いやでも、スモークサーモン余らせたってしょうがないじゃない。オニオンスライスも、ねえ。

たこパ

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 連休なのにどこにも行けないかわいそうな我が家の男たちのため、たこ焼きパーティーを開いた。せっかくなので変わり種として、イナゴの佃煮を入れてみたりもした。これが案外美味しい。ぜひお試しあれ、とまでは言わないが。
 刺し身とビールがあるのは、臨時収入があったため。予想通りに走ってくれたお馬さんに感謝である。皐月賞天皇賞(春)でね、連勝したんですわ。ウェッヘッへ。かしわ記念のことは聞かないように。
 それにしたって、競馬場に行きたい。いつの日かまた、そんな日々が来ますように。